インタビュー

新しい挑戦に取り組む経営者や、一歩先に中小企業に転職し、新たなキャリアを築いている先輩転職者のインタビューをご紹介します。


【転職者インタビューvol.1】前職のスキルを生かして転職先の事業革新に参画。経営者とともに人が育つ「道場」を作りたい。

- 書き手:川口枝里子

埼玉県ときがわ町に、開店2時間前からお客さんが集まる温浴施設があります。店舗の前にあるパラソルと椅子に座り、お店が用意した温かいお茶を飲みながら、談笑して開店を待つお客さんたち。

-みなさん、いつもこんなに早くにいらっしゃるんですか?

「今日はここでカラオケ大会があってね」
「土日は朝5時からやってるから、もっと早くにくるよ」
「26日は2・6(ふ・ろ)の日だからね、ちょっとしたサービスがあるんだよ」

日帰り温浴施設で、カラオケ大会? 不思議な組み合わせに首をかしげつつお客さんと談笑していると、開店20分前には次々と椅子から立ち上がり、お店の前に列ができはじめました。

これほど地元住民から愛されている温浴施設の名前は、「昭和レトロな温泉銭湯 玉川温泉」。株式会社温泉道場が運営する温浴施設です。

株式会社温泉道場は、ユニークなしかけを取り入れた新しいタイプの温浴施設を開発している、「日帰り温泉専門」の運営会社。代表取締役の山崎寿樹さんは常識にとらわれない視点としかけで、業界全体をもりあげようとしている、いわば温浴施設業界の風雲児です。

設立からたった5年で業界の注目株となったこの会社には、さまざまなキャリアをもつ人材が集っています。今回は、大企業での経験をもちながら、株式会社温泉道場に転職をした「経営者の右腕」にインタビューしました。

2015-11-02 掲載

キーワード :

転職者インタビューvol.1 野村謙次さま
(株式会社温泉道場 メディア事業部 部長)

-まず初めに、新卒で入社した1社目について教えてください。
私は、元々はマスコミ志望で雑誌をつくりたかったんです。ですので、出版社を中心に就職活動をしていたのですが、就職氷河期で。出版社は採用が少なかったこともあり、その思いは叶いませんでした。

その時、自分が何をやりたいのかを考えたら「① 経営者と会える仕事がしたい ② メディア媒体を持っている組織で何かやりたい ③ 文字を使った仕事がしたい」でした。そこで出会ったのが、1社目となる求人広告の会社、しかも折り込み広告で日本一という会社だったんです。紙媒体の求人だけではなく、ウェブへの転換を模索するなど、さまざまな挑戦をしているおもしろい会社でした。

また、父が経営していた会社が10歳の時に倒産して、中小企業の辛さや苦しさは知っていたので、こういった、中小企業経営者のために仕事ができることはやりがいがあると感じて、入社を決めました。

-1社目の企業ではどのようなお仕事をされていたんですか?
最初に配属されたのは営業でした。正直、やりたい仕事ではなかったのですが、将来メディアに関わりたいなら、営業成績をあげることも大切だと知りました。なので、2年目からセールスの技術を磨き、結果として600人いる営業のうち上位1%ぐらいの成績となったんです。
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(入社一ヶ月目の新入社員に売り場の実務を教える野村さん)

“営業”からメディアの世界へ。東日本大震災が変えた価値観

-すごいですね。そこからどのような経緯でメディア関連の仕事に関わるようになったのですか?
会社がフリーペーパー事業をスタートすることになったんです。「待ってました!」と手を挙げました。求人情報を扱いながら、テレビCMなど広告代理店とやりとりをするなど、メディアの立ち上げに関わる仕事は一通りさせてもらいました。

元々、セールスの技術を磨いているうちに、少し罪悪感があったんです。売ろうと思ったらいくらでも売れるけど、それが本当にお客様のためになっているかと考えると、お役に立ててない時が増えてきました。お客様に喜んでもらえている実感も少なくなり、毎日働いていても充実感を感じづらくなっていたんです。

その中で注目していたのはソーシャルメディアでした。2008年ごろはTwitterも日本で出始めたばかりで認知度は非常に低い状態でした。社外の勉強会に参加するなどして徹底的に研究をしていて、そろそろソーシャルメディアの新規事業を立ち上げようと思った時に、東日本大震災が起こったんです。

その時「東北の人がこんなに苦しみ、がんばっているのに自分はこのままで本当にいいのだろうか」と、ふと思い始めて。「このままだと一生後悔するかもしれない」と、2012年に会社を退職しました。
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(ソーシャルメディアは黎明期から研究をしていたとのこと。退職後はそのソーシャルメディアを活用する復興支援団体へ。)

-「後悔」というのは?
「世の中を変革できるかもしれないスキルを持っているのに、それを生かしていない」という点です。震災によってSNSの価値が飛躍的に向上した、ということも転職を後押しした大きな理由の一つです。

震災により、TwitterやFacebookの価値が大きくなったと思います。それは「善意ある個人が発信する、情報集約プラットフォーム」としての価値です。個人が発信する情報でも、それが集約されれば大きな力となり、世の中に何か変革を起こせるかもしれない。こうしたパワーを持ったメディアが初めて世の中に現れたことを感じました。

同時に、「これは中小企業にとってチャンスなのでは」とも思っていました。広告宣伝費をかけることのできない企業にも、ウェブコンテンツを積み重ねていくことで優位に立てる時代がきたんだと。

退職を決意し、東北へ。“事業”を通して地域再生に取り組む

-大手企業を退職後、「中小企業」や「地域」というキーワードはどのように出会ったのでしょうか?
退職後は、ソーシャルメディアを活用して震災復興を推進していた復興支援団体に入りました。最終的には理事を務め、「経営」の中でも資金・人材面で事業に携わりました。その後、自分で一般社団法人を立ち上げ、地域の中で「事業を起こしていく」ことをやろうとしたんです。

-ご自身も経営者だったのですね。山崎社長とはどのように出会ったのでしょうか?
自分で立ち上げた一般社団法人の事業連携をお願いしにいったのが最初です。お話を聞いて衝撃を受けました。「自分がやりたかった三歩先の事業」をやられていた。しかも自分よりも若く、経営コンサルティング会社で事業再生をした経験もあり、まさに「火中の栗」を拾うような仕事をしていたんです。

そこで「事業連携はやっていないが、野村さんのような人はこの会社にいないから、ここで働いてみないか」とお誘いいただきました。

実は「3年間限定」で、温泉道場に参画しています。今は4か月目(※注:取材当時。)で、将来的には独立することを前提としています。

“3年間限定”という働き方。転職者だからこそ、スキルを持込み企業の新しい挑戦を後押しできる

-温泉道場ではどのような事を達成したいですか?

「温泉道場の門を叩いたら、事業に関する実務能力を付けて飛びたてる」という、地域で活躍するプレイヤーが輩出される企業にしたいです。まさに「道場」ですね。

温泉道場では、さまざまなことが学べます。例えば、社長の山崎は元経営コンサルタントなので、コンサルティングスキルや経営企画について間近で学ぶことができますし、温浴施設を運営しているので、BtoCのサービス業についても学べます。

一つだけ足りていないものとしては、「BtoBの事業の現場」です。ここが出来るようになれば、もっと地域で活躍できる人材が育つ土壌になっていくと思っています。そこを私の今の領域である「広告」と「人材」の方面で育てていきたいですね。

-一人ひとりの裁量が大きな中小企業だからこそ、携われる範囲が広くなり、自身の成長につながる、というのは中小企業で働く魅力ですよね。最後に、転職を考えている方や悩んでいる方にメッセージをお願いします。

私は東日本大震災の時に、「明日、死ぬかもしれない」、「じゃあ、やれることをやりつくそう」と考えて今に至ります。既存の会社組織の仕組みにとらわれず挑戦するか、または挑戦しないか。それを「決断する」ことが何よりも大切だと思っています。「挑戦しない」という選択ももちろん、間違いではありません。でもそう「決める」ことが大切です。あとは、「いつ死ぬかわからない」からこそ、勝負をかけてみたらいいのではないでしょうか。
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(「年下だけど、山崎社長のことは本当に尊敬しています」と語る野村さん。ご自身も経営者だったからこそ理解できることがある良きパートナーです)

-野村さん、ありがとうございました。温泉道場では、新規事業立ち上げにつき、人材を募集しています。ご関心がある方はこちらをご覧ください。

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(地元の人に愛される温泉。アルカリ性のお湯と居心地が良い岩風呂に癒されます)


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