インタビュー

新しい挑戦に取り組む経営者や、一歩先に中小企業に転職し、新たなキャリアを築いている先輩転職者のインタビューをご紹介します。


【経営者インタビューvol.1(前編)】世界唯一の技術と提案力で「脱・下請け」。地域の「テント屋」さんの驚くべき挑戦とは。

- 書き手:川口枝里子

日本屈指の産業集積地、愛知県。その歴史は江戸時代までさかのぼり、繊維業、木材流通・加工業、さらにはトヨタ自動車株式会社の源流である「株式会社豊田自動織機」も生み出された、たぐいまれなる地域です。

そんな愛知県に本社を置く「株式会社丸八テント商会」は、「世界唯一のデザインカーボン技術」と「下請けから脱する提案力」を武器に世界に勝負をかける「テント屋」さんです。

「愛知のテント屋」としてスタートした同社はなぜ、ここまでチャレンジする企業となったのでしょうか。3代目経営者である代表取締役社長 佐藤 均(さとう ひとし)氏にお話を伺いました。

2015-11-30 掲載

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経営者インタビューvol.1 佐藤 均さま (株式会社丸八テント商会 代表取締役)

-株式会社丸八テント商会の成り立ちについて教えてください。
丸八テント商会は、昭和26年に創業しました。戦後の混乱期、私の祖父がリヤカーにかけるシートを製造したのが始まりです。経済が発展するにつれて、店の軒先に使用するテントを作りはじめ、現在のような大型テントの製造につながってきました。

父の代には名古屋市の行政に働きかけて「繊維街一帯にかけるアーケードテント」を作ったこともあります。「名古屋根(なごやね)」というのですが、これは私たちが提案した、名古屋特有のものなんです。

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(※名古屋の独自文化となった「名古屋根」。他県にはない珍しさから先日テレビでも特集されたそうです。)

名古屋市には長者町という全国有数の繊維街として栄えた問屋街があります。繊維・衣料はその特質上、太陽の光や雨が天敵でした。そこで日避けと雨避け対策として、店の軒先だけでなく歩道上もテントで覆う「アーケードテント」を提案し、それが「名古屋根」と呼ばれて繊維問屋以外にも広がりました。当社の大型テント技術の始まりです。今でも土木局に行くと「丸八テント仕様」というフォーマットが残っているんですよ。
また、2005年の日本国際博覧会(略称:愛知万博)の時にも、他社海外企業とのコラボレーションをさせていただき、大型テントを作る技術が磨かれました。

-他のテント屋にはなかった「大型テントの技術を磨く機会」に恵まれたのですね。その機会を得るために、どのような経緯を歩んだのですか。
私が丸八テントを継いだのは、18歳の時です。昭和54年、高校を卒業してすぐに働きはじめました。もちろん経験はなかったので、まずは職人の経験をした方が良いと思い、3年間徹底的にテント製作に携わりました。

次に営業を担当するようになりましたが、20歳そこそこの人間が名刺を握りしめて行ってもまるで相手にされない。どうしたらいいかと悩んだ末に思いついたのが「東京・神戸のテントの写真をたくさん撮ること」だったんです。カタログを作ることなんてできませんでしたから、とにかく東京や神戸のテントの写真を撮り続けました。撮った写真をお客さんのところに持っていき「東京にはこういうテントがありますよ。あなたがつくりたい店舗のイメージはこういうものではありませんか」と提案してまわったんです。そこから新しい仕事につながっていきました。
この、他社がもっていない「東京や神戸のテントのフォトブック」が当社の強みとなりました。

「テントのことなら誰よりも詳しい。」突出した技術と提案力で勝負する!

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-その強みは今の丸八テントにとって、どのように生かされていますか?

「テントに関しては、うちより幅広く、尚かつ詳しいところはない」と自信を持って言えることが「価格競争に巻き込まれず、技術とアイディアで勝負する」ということにつながっています。

例えば、ヨーロッパやスペイン、アメリカ西海岸のテントの写真集なども持っているのですが、そうすると「西海岸をイメージした店舗を作りたい設計士さん」と対等に話しができます。フォトブックを見せながら、「砂漠の中に人工的に作った街だから、この素材のテントが多いですね。イメージはこのような感じですか?」と説明することもできるんです。

「お客様のオーダーを待つ」というスタンスだと価格で勝負しなければならなくなります。そうではなくて、設計士が持っていない情報を元に提案し、コンセプト設計や構造なども一緒に考えていくと「丸八テント仕様」という言葉がでてくるんです。

海外の動きをいち早くキャッチする。世界唯一の技術で大手企業とコラボレーション

-その独自の提案力があるからこそ、「脱・下請け」や建設の上流工程に入っていけるのですね。技術力はどのように磨かれているのでしょうか。

海外の展示会に視察に行くことがあります。その時に海外の流行を知り、自社の商品や技術に生かせないかと考えるようにしています。

例えば、京都の西陣織の技術を生かしたカーボン素材の商品があるのですが、これはヨーロッパ車の流行と、以前から考えていたものが合致したことで、実現できると確信したものです。

ヨーロッパ車は軽量化のために、カーボン素材の採用が増えてきているんです。新しい技術というものは、まず自動車産業に取り入れられ、そこから電化製品に使用され、次にスポーツ…といったように広がっていきます。そこでまず、そのカーボンの可能性に注目しました。
そうしていると、京都の工業組合から「西陣織を世界にアピールしたい」という依頼が舞い込んできて。結果、生まれたのが「西陣帆布」です。西陣織の特殊な折り方をカーボンに採用すると、通常よりも細かい目で織ることができ、美しい模様も表現できます。黒一色だったカーボンの世界に「デザインカーボン」という概念が生まれました。これは世界で初めての技術です。

この「西陣帆布」の技術を提案できたことで、有名大手企業からも発注がたくさん来るようになりました。この突出した技術と企画力のおかげで、大手企業とも渡りあっていけるのだと思います。

※後編の更新は、12月6日を予定しています。


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