ウミーベ株式会社 代表取締役CEO カズワタベ氏
転勤族だった子供時代を経て音大へ
–長野県松本市のお生まれとの事ですが、自然が豊かな場所ですね。
360度山に囲まれた盆地で、雪がすごく降りました。4歳まで松本市にいたんですが、転勤族で、その後長野市、新潟市、宇都宮市、山形市、横浜市、東京と実家ごと移動しています。今、福岡は2年目になります。
–今はIT関連のお仕事をされています。意外な感じもするんですが、音大を出ていらっしゃるのですね。
はい、在学中から卒業して2年目くらいまで、インディーズでクラブジャズバンドをやっていました。CDも一枚出しました。
–Kazzさんのお名前もJazzから?
そうです。学生時代からジャズが好きだったのが由来で、インターネットのハンドルネームに使っていました。バンドを始めた頃にはこの表記で、周りに浸透してしまったので正式な書類以外はこの名前を使っています。
–バンド活動を経て、今のポジションへはどのように行き着いたのですか?
2011年にGrow株式会社というクリエイターを支援するウェブサービスを開発・運営する会社を創業しました。これが実質的な社会人デビューですね。
元々インターネットやデザインが好きで、音楽以外をやるならウェブサービスを作りたいと思っていました。
その後2013年に独立してしばらくフリーランスとして活動し、2014年8月にウミーベ株式会社を設立して今に至ります。
なかったからやろうと思った、「釣りとIT」
–ウミーベ株式会社の事業内容について教えてください。
釣りが楽しくなる情報&ニュースサイト「釣報 [ツリホウ]」と釣果共有カメラアプリ「ツリバカメラ」の開発・運営を行っています。
「釣報 [ツリホウ]」は釣り人のための情報サイトで、新製品情報や、釣りのノウハウなど、見るだけで釣りに詳しくなれるような内容を掲載しています。現在一日に7本は記事をアップしていて、開設から半年で月間100万ページビューを超えて、釣り業界では着実に認知度が上がってきているなと実感しています。
▶釣報[ツリホウ]
「ツリバカメラ」は昨年9月にリリースしました。こちらはカメラアプリですが、釣り人同士が好きな釣りの話題で交流を図れるSNSでもあります。投稿する度に自分の釣果がストックされて、マップ上や魚種ごとに振り返られるという面白さもあります。
初心者の方には高い釣りのハードルを緩やかにして、面白いと感じてもらえるものにもしたいと思っています。今はiPhoneだけのアプリですが、これからAndroid版もリリース予定なので、さらにユーザーさんが増えてくると思います。
▶ツリバカメラ
–ウミーベという社名も、釣りが由来ですか?
はい、創業時に名前を決めた時点で、オフィスは海辺にしようと決めていました。釣り関連の事業をビルに囲まれた場所でやっても説得力がないなと思って。会社自体も一つのコンテンツだと考えていて、そこにストーリー性を待たせたかったんです。
ウミーべ株式会社が入居している海辺のシェアオフィス「SALT」
–釣りとITに、何か共通点はあったんですか?
いえ、むしろ無かったからやろうと思いました。僕自身、3年前から釣りにハマっているんですが、当時は知りたい情報がまとまった場所がなくて、いつも不便に感じていました。
そこでそういう情報がまとまったサイトや、もっと釣りの情報をシェアできる手段が欲しいなと思い立ち上げたのが「釣報」そして「ツリバカメラ」です。
–好きな釣りを楽しむことが、仕事につながる働き方がいいですね。
釣りは趣味でもありますが、仕事でもあります。自分でサービスを使う事で改善点も見つかりますし、実際にやっていないと分からないことはたくさんありますから、自分自身が釣り人である事は大事だと思っています。
何の迷いもなく移住した福岡、そこでやるから面白い
–福岡には、何かご縁があったのですか?
一切ありませんでした。福岡には移住前に二度遊びに来ていて、環境を気に入ったのが移住を決めた理由です。前の会社から独立した年にフリーランスだったので、何の迷いもなくここを仕事の場にしようと決めました。
福岡は特に住環境が気に入っています。メディアで言われていたことは、全部本当だったなと感じています。
空港は近いし、食べるものは美味しい、街の規模感も自分に合っていてすこぶるいいですね。
–東京と比べていかがですか?
18歳から東京にいましたが、常々東京は出たいと思っていました。いる人やコンテンツは面白いと思うけれど、住環境は決して良くはないなと。人が多いのが苦手なのもあります。福岡は都市でありながら過密でなく、自然にも近いのが魅力だと思います。
–福岡で働くことが、東京で働くより魅力があるのですか?
就職するのであれば、東京の方が面白くて稼げる仕事があるのはその通りかもしれません。でも自分で会社を立ち上げるのであれば、仕事の内容は工夫次第でいかようにもできます。だから仕事は気にせず、住みたい場所で会社を立ち上げようと思ったんです。
あとはそこでやりがいがあって、成長する可能性がある事業を生み出せれば公私共に理想通りになりますよね。
–経営者として、スタッフを採用するポイントは?
まず最低限のスキルがあること、そして一緒に働きやすいことですね。今は社員が2名と小さい会社です。関係が密なので、スキル以外にもコミュニケーション力、人柄などが自分と合うかどうかを見ます。事業領域を絞っているので、それに興味がない人は難しいと思います。
また、社内を補う外部スタッフとして、アルバイトで大学生さんとプログラマーの方で3名ほどお願いしています。やりとりは主にオンラインですが、やはりコミュニケーション力は必要です。
–今後の展開について教えてください。
「釣報 [ツリホウ]」と「ツリバカメラ」のユーザーを増やすために、新機能の追加やアップデートを行ってもっと広く使ってもらいたいと思っています。これらを広げながら更に釣りの領域で新しい事業も展開し、会社を成長させていきたいと思います。
直近では、これから「ツリバカメラ」のAndroid版リリースに向けての動きが大きくなってきますし、経営者としては組織体制の強化と資金確保が当面の課題ですね。
好きなことをやっていると苦労はない、住んでみてから考えてもいい
–最後に地方で働くことに関心がある読者へメッセージをお願いします。
自分の場合は転勤族だったこともあって、住む場所が変わることには慣れていたので、あまり抵抗なく移住できました。
ただ、そうでない方でも移住を検討しているのであれば、まず移住してしまって、それからどうするべきか考えた方が良いんじゃないかと思います。実際住み始めてみないと分からないことがたくさんあるので。
飛び込んでしまえば意外とどうにかなるものなので、まずは行動してみましょう。
ライターよりコメント
小・中学生から会社を設立しよう、と思っていたというワタベさん。企画やプロダクトのプランが得意で、アイデアがたくさん湧いてきそうな人でした。フットワークの軽さは、子供時代に転勤族だったことがあるのかも知れませんが、自由で大きな変革をもたらすジャズが好きなこととも関係があるのではないかと感じました。好きなことをやり続けていく信念にも心打たれました。ありがとうございました。